昨日の夕方、一気に降りだした雨も夜には上がり、今日はまた日差しがでています。でも、大気の状態は不安定らしく、夜に掛けてまた降ってきそうな予報が出ています。はたして...
さて、今、県や工業技術センターが中心となって、岩手のワインを向上・普及させようとの目的で、生産者や小売、飲食店、更には一般のワイン愛好家を交えた「岩手県果実酒研究会」なる会合が時折開催されております。私も大体参加させて頂いておりますが、昨日は講演会が開催されましたので、今日はそのお話しを。
講演をして下さったのは、1998年に創刊されたワイン雑誌
「ワイナート」の主筆を昨年末まで勤め、現在はフリーのワイン・ジャーナリストとして活躍されている田中克幸氏です。
「エーデルワイン」さん、「くずまきワイン」さん、「紫波自醸ワイン」さんを視察して来られての感想などを伝える場として、正味1時間の短い講演でしたが、その内容は非常にインパクトのある濃いお話しでした。
「ワインとはその土地を表現することであり、ワイナリーを歩いて、そのワインから岩手らしさを感じることは出来なかった」
氏はいきなりこのようなコメントから入り、しかし、その強い信念から伝わってくるお話しは我々聞いている者に強い衝撃を与える内容でした。
「岩手には素晴しい自然があり、明治維新の南部藩がそうであったように、義を重んじる県民性がある。土地を表現するということは、その風土や人間性をも表現するものであって、誰かの真似をするだけで成功するはずは無い。」とも仰っていましたし、また、
「岩手に限らず、日本でフランス原産のカベルネやピノ・ノワール、シャルドネを持ってきて頑張っていい物を造ったとしても、品質では本場フランスに適うはずも無く、価格でもチリやアメリカの様な広大な土地で栽培している国と張り合うことなんて不可能」だとも。
では、『岩手らしさ』ってなんなんでしょう?
氏は、岩手に合ったブドウ品種を選定し、風土に合った栽培・醸造を行い、その味わいを好み必要としているお客様を探して営業していくことの必要性を訴えておられました。
そんな中で、氏が可能性を見出したブドウ品種が3種類あると言っていまして、一つは
「山ブドウ」。「くずまきワイン」さんのワインを見て、その可能性に“らしさ”を見出して下さったようです。そして
「リースリング」、まだ栽培面積は小さいものの推奨していくべきものではと。逆に言えば「リースリング・リオン」には限界を感じていたようです。そして
「ツヴァイゲルト・レーベ」。オーストリア原産のこのブドウ、現地で造られるワインよりも高い品質を得られるとまで仰って下さいました。更には、このブドウを使ってロゼワインを造るべき、と。
そうすればきっと、日本一の「リースリング」や「ツヴァイゲルト・レーベ」が造れるでしょう。と
「岩手の日照量、積算温度を考えれば、色素の強いブドウを栽培し、力強いパワフルなワインを造ろうと思っても所詮無理な話しであって、むしろ色素は薄めで、酸度が高めのワインこそが岩手らしさだと意識を変えていく必要がある」、と。
そして、そういったワインを外に向けてマーケティングしていくことの必要性を説いておられました。
「フランスにはネゴシアン(ワイン商)があり、求めている人に届けることが出来ますし、輸入ワインはインポーターが同じように営業しています。国産ワインにもそうした努力なくして、土地の表現としてのワインを伝えていくことは出来ない。」
「自然は変えられるものではないし、その土地で育まれたワインが美味しくないわけでは無い。それを必要としているお客様が見えていないのだ。」
「フランスのシャビニオール村にあるたった一軒のチーズ工房で造られる「クロタン・ド・シャビニオール」は世界中の誰もが知っているシェーブルタイプのチーズですよね。」
まさに、人真似ではない、岩手のオンリーワンを見つけ、造り、紹介し、飲んで頂くことが必要なんだと考えさせられた講演会でした。
皆さんはどんな感想をお持ちになるでしょう?
くしくも、その夜の報道ステーションでやっていた特集。
「今治タオル」の再生への道を見ながら、共通する点、見習うべき点があるように感じました。